わくわくWANILAND

雑感

 2022.05.06
 突然の発表であります!

 とうとうこの企画が帰ってきたのである!そう「PCIビデオカードベンチマーク大会♪第14弾」である。

 前回は2017年6月ということで、ほぼ15年ぶりの登場である。なにしろこの間、新作のPCIビデオカードが登場することはなく(少なくとも一般に容易に入手できるレベルで)、ネタとして取り上げる要素は皆無であったことから、書くことは何もなかったのである。
 で、そんな状況なのになぜこの企画が動くことになったのかと言えば、Windows11の登場なのである。ご存じのとおり、Windows11は動作環境として規定されている内容がなかなかに厳しく、字面だけ見ればWindows11が動作するPCIビデオカードは皆無と言うことになるのだ。

 そこで、Windows11でPCIビデオカードを使うことができるのか?という観点を中心にベンチマークを取ってみることにした。なので、今回の企画のメインはベンチマークデータではなく、その後の考察というかその他諸々の方にあるということをご理解いただきたい。

 さて、まずは検証環境である。
 実は、検証環境は一新するつもりだったのだが、事前検証の段階でアウトなことが判明したので、以前の環境を引っ張り出してきた。これは、文字どおり引っ張り出してきたのであって、現在の家に引っ越してきて5年以上が経過しているのだが、引っ越し時に押し入れの奥にしまい込んだまま放置してあったものが日の目を見ることになったのである。このマシンもさぞ驚いたことであろう。

・検証環境
Hewlett-Packard製 HP ProLiant ML110 G5
CPU:intel Core2Quad Q6600(2.4GHz×4)
MEMORY:DDR2 SDRAM 8GB(Non ECC/FSB=800MHz)
Chipset:intel 3200+ICH9R
SSD:Crucial m4 CT128M4SSD2(128GB)
Optical Drive:ASUS DRW-1814BLT
OS:Windows11 Home 21H2 …注

注:本来この環境では、Windows11をインストールしようとするとシステム要件を満たしていないとしてはねられてしまう。そこで、今回はインストール時のシステムチェックを回避してインストールしている。このため、Windows11の正式な環境で調査しているわけではないという点については承知しておいてほしい。

・検証対象ビデオカード
◎NVIDIA
GF-GT610-LP1GHD(玄人志向、GeForce GT 610)
GF6200A-LP128H(玄人志向、GeForce6200A)
GFX5700LE-P256C(玄人志向、GeForce5700LE)

◎AMD
H545H512P(HIS、Radeon HD 5450)
RH3450-LE256H/HS(玄人志向、Radeon HD 3450)…参考 OSインストール時に使用するディスプレイアダプタとして利用

 なお、ドライバは原則としてWindows11が自動適用するものを使用している。なぜなら、ここにラインナップしているビデオチップは、すべてDirectX12に対応しておらず、公式にはWindows11用のドライバが配布されていないためである。
 そして、GeForce5700LEとGeForce6200はMicrosoft基本ディスプレイアダプターが当たった状態であり、ちゃんとドライバが動作していない点に注意して欲しい。ちなみに、サーバ用チップセット内蔵のビデオ機能についてもドライバは当たっていない。
 なお、一部のビデオチップについてはWindows10用のドライバをインストールして動作させることができたが、ベンチマークスコアは誤差の範囲でしか変動しなかったため、Windows11の標準ドライバを使用したデータを採用している。

 それでは、早速だが結果を見てみよう。

 最初は、「タイムリープぶーとべんち」から。
画像:タイムリープぶーとべんち
 ドライバが当たっていないGeForce5700LE/6200は5fpsとその実力が出せておらず、ドライバが機能している3製品はスコアを出している。PCI Express x4接続のRADEON HD 3450が10fpsというのもどうかと思うのだが、前回の結果とほぼ同じ傾向・数値を示しており計測ミスと言うことはないと思われる。

 ちなみに、GeForce5700LE/6200ではレンダリングが正常に行われないため、以下のように画に乱れが生じる。
画像:GeForce5700LE/6200実行時の映像
※タイムリープぶーとべんち実行時の画面キャプチャから一部切り出して使用
 タイムリープぶーとべんちは、frontwing社の著作物です

 次は、3DMark06。
画像:3DMark06
 こちらも、タイムリープぶーとべんちと同じく前回と同傾向の数値。

 続いて、3DMark11。
画像:3DMark11
 つまらないことに、こちらも前回と変化なし。ある意味、本シリーズの継続性が確認できたとも言えるのだが…。(注:予断を与えないよう、測定時には前回記録は見ていない。ここまで前回と変化がないことには、今、書いているこの時点で気がついたのだ。)

 ようやく、ここからが新ネタ。
 まずは、3DMark。
 Windows11を入れるからにはDirectX12…なんだけど、冒頭で書いたとおりPCIビデオカードでDirectX12対応のものはないわけで。
 とりあえず、すべてのビデオカードで3DMarkを動かしてみたけれど、「Night Raid」が動いたのはGeForce GT610のみ。スコアは1253だった。ちなみに、Fire Strike/Time SPYは起動するものの、ベンチマークとしては完走しなかった。RADEON HD 5450で動かなかったのは、たぶんメモリ容量の関係が大きいかなと推測している。参考までに、RH3450-LE256H/HSではCloud Gateが選択された(SCOREは804)。

 これでは不完全燃焼なので、最後に新しいベンチマークとして「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」を導入してみた。
画像:ドラゴンクエストX ベンチマークソフト
 傾向としては、3DMark06/11と同じ。ちゃんとドライバが当たってくれさえすれば動くのだが(動作条件はDirectX9.0c+SM3.0)。

◎考察
 Windows11になっても、基本的にはWindows10と動作・傾向は変わらないということが確認できた。
 そして、DirectX12に対応していないGPUであっても、Windows Update経由でドライバが提供されるということもわかった。
 なので、現在、そこそこ古いGPUを使っているとしても、すぐに交換しなければいけないということはなさそうだ。

 それよりも大きな問題なのは、ネイティブPCIを備えたマザーボードもしくはネイティブPCIのGPUが存在しないということだ。
 DirectX12に対応するようなGPUは、当然のことながらPCI Express接続が前提となるため、ネイティブPCIのものなど存在せず、PCI Express to PCIブリッジチップを備えることになる。さらには、サーバ向けチップセットでも最近の世代のものはPCIをサポートしないものが多く、大抵の場合はPCI Express to PCIブリッジチップ経由でPCIボードと接続することになる。
 すると、チップセット→PCI Expressバス→ブリッジチップ→PCIバス→ブリッジチップ→GPUという接続になってしまい、ブリッジチップを2つ挟むことになる。この時、PCIバスの向こう側のブリッジチップが正常に動作しないため、GPUを認識しないという事象が発生する。

 実は今回の企画のきっかけは、冒頭にWindows11が登場したため…と書いたのだが、メインマシンをWindows11マシンに置き換えることに端を発している。新マシンのマザーボードを探しているときに、Alder Lake対応のマイクロATXマザーでPCIスロットを備えているものを見つけてしまったのだ。「こ、これは…」ということで、そのマザーボードを入手するところから始まったのだ。これが、検証環境の一新を目論んだという記述につながっている。

 さてさて、そのマザーボードはGIGABYTEのB660M D3H DDR4というツクモオリジナルモデルなのだが、PCI Express to PCIブリッジ経由でPCIスロットを1本備えている。ここにPCIビデオカードを刺してみたのだが、結果的には正常に動作させることはできなかった。
 原因の一つは、先に書いた二重ブリッジチップの問題。Windows11のデバイスマネージャーで見ると、2つのブリッジデバイスが確認できるのだが、2つ目のデバイスに!マークがついて正常に動作していない。まぁ、普通はそんなつなぎ方しないからねぇ。

 そしてもう一つが、UEFIに対応できるかどうか問題である。今回、UEFI/BIOSを初期設定のままで動作できたのは、新たに購入したGeForce RTX 3060のものだけだった。その他のものは、PCI Express接続のものも含めてレガシーデバイスのサポートをONにしないと認識できないように見える。まぁ、そもそもUEFIなんてなかった時代のものばかりだからなぁ。
 とすると、古いビデオカードで初期設定からやろうとすると、UEFI対応のビデオカードを使わないとセットアップできないというとんでもない矛盾が発生することになる。いやはや、なんとも。

 本当の最後の最後の結論を書いておくとしよう。

 今後、Windows11環境で正常に動作するPCIビデオカードが登場する見込みはない!すなわち「PCIビデオカードベンチマーク大会♪」もこれが最終回だっ!!
 これまで読んでくれた方々に感謝。一応、レガシー環境は今しばらく残しておくつもり。