メニュータイトルPC98-NX改造記録PC-98改造記録ThinkPad535活用講座WindowsCE活用講座雑感

充電器の製作


〜単三型NiCd/NiMH2本用自動放電機能付き急速充電器〜

 CASSIOPEIA A-60などのH/PCでは、バッテリとして単三電池2本を使える場合がある。実際の使用場面ではアルカリ電池を使う場合もあるが、普段からアルカリ電池をずっと使っていたのでは、コストパフォーマンスの悪さは否めない。
 そこで、ニッカドなどの充電池を使うことが多くなるわけだが、オプションのバッテリパックというのも、容量の割に値段が高い。しかも、充電制御がどうなっているのかわからないので、バッテリの寿命が短めになってしまう可能性というのも十分あり得る。

 さらに、私の普段の使い方ではセルラーカードを使うことが多いので、通信中にバッテリを消耗させて残量警告が出ることが多い。しかし、セルラーカードを使わない状態であればまだ容量が残っているので問題なく動作するのだ。この状況でバッテリを再充電してしまうと、いわゆるメモリ効果によって見かけ上の容量が減ってしまい、寿命が早く来てしまうことになる。

 そこで、市販の単三型充電池を効率よく使用できるように、充電器を作ってみようと思いたったわけである。しかも、なるべくメモリ効果を起こさないようなものを。

 で、とりあえず仕様は以下のようなものとした。
・定電流充電(Ic=0.5A)
・充電制御はタイマ式
・対象電池は単3型NiCd/NiMH。容量は500mA〜1600mAのもの
・完全放電後、急速充電を行い、充電完了後トリクル充電に移行
 充電電流については、 1A程度にすることも考えたが、接触抵抗や発熱のことを考慮すると安全性を優先すべきとして0.5Aに抑えた。また、充電制御についても、−ΔV方式を採用した方が正確に充電できかつ適用電池も多くなるのだが、コスト面と放電制御の面倒さを考えると、まぁタイマ式でもいいかと。なにしろ、完全放電後に急速充電するので、厳密な制御はしなくてもいいわけだし。

 というわけで、回路図は以下のとおり。
回路図
 狭い中に無理矢理つっこんでいるのでかなり見にくいと思うが、 回路の説明をしておく。なお、回路の一部は秋月電子通商のキットからのパクリである。放電回路なんかはもろまるわかり(^^;)

 まず、充電池をつないだ状態(BAT1)にすると、R11D1によるトリクル充電が行われる。放っておくと、ずっとこのまま。

 右下の部分が放電制御回路だが、SW2を押すとQ5がONになりQ4にベース電流が流れ、SW2を離してもQ4はONを維持する。Q4をOFFにするのはQ6の役目であり、急速充電が始まるとQ6がONになりQ5のベース電圧を下げOFFにし、Q4も動作を止める。

 このQ4はONの間、右上部の放電回路を構成するQ3・D4に電圧を供給する。Q3はバッテリからの電流をR14に流すことにより放電させている。この時、D4Q3のベース電圧をおよそVF=1.8Vに保つ。一方、Q3のVBEはダーリントン接続のため1.2V程度で一定であり、放電回路が動作する限りR14にかかる電圧は0.6Vで一定となる。このため、0.5Aの定電流放電回路となるのである。

 U2S-8081BがタイマIC。一時期はいろいろなところで使われたのだが、近年生産中止になったらしい。まだ在庫をもっているところでは販売しているので、必要な人は早めに購入しておくと良いかもしれない。
  今回は、時定数回路を構成しているC3R1R2を切り替えることで充電時間の長短を制御し、大容量/小容量の充電池を充電できるようにしている。
 ちなみに、充電時間は4.5/2.2時間想定容量は1500〜1600mA800mAである。もちろん、容量の多少の前後は誤差の範囲に含まれるので問題ないだろう。1000〜1200mAクラスが一番対応しにくいかな?

 バッテリの電圧監視はオペアンプのLM358(U3)をコンパレータとして使用し、放電終止・異常電圧の検出を行っている。最低電圧のVL=1.8Vを検出した場合は、S-8081Bの2ピンをHにしタイマ動作を開始する。通常の急速充電ではあり得ない電圧であるVH=3.5V以上を検出した場合には、4ピンをHにしてリセット動作に入り強制停止させることになる。

 Q1・Q2・R9が急速充電回路である。S-8081Bの3ピンがHになるとQ1がONになり急速充電電流が流れる。電流を制限しているのがQ2・R9なのだが、電流が流れることによってR9の両端に生じる電圧をQ2により監視し、VBE=0.6Vと一定であることを利用してR9の両端の電圧が0.6Vを越えないように、すなわちR9を流れる電流が0.5Aとなるように動作する。

 回路の動作はこんな感じなのだが、全体としてはディスクリート中心で組んでいるので、それほど複雑なことはしていない。多少の知識がある人なら問題なく理解できる程度。っていうか、それくらいできる人ならもっといい回路組むんだろうねぇ。

実装状況

 回路図はごちゃごちゃしているけど、実際に基板に実装した状況は上の写真のとおりすっきりと。もちろん、パスコンなどはチップコンを使用してはんだ面に実装してあるので見えていない。
 白帯のある8ピンDIPのICがLM358N、その左下側にあるのがS-8081Bである。さらにその左側が急速充電/トリクル充電回路部で、上側が放電制御回路となっている。

 実際に動作させたところ、おおむね想定どおりの動作をしているのだが、充電時間が計算よりも少し短めになる。このあたりはどうしても誤差が出るので仕方のないところで、許容範囲に入っていればよしとすべきだろう。

  多少時間はかかるものの、自動で完全放電してくれるのは楽でいい。最大の難点は、最近はCASSIOPEIAで通信をする機会が少ないので、なかなかバッテリが無くならず出番が少ないことだろうか(笑)


(c)2000,2003 WANI3/わくわくWANILAND ロゴ小