一昔前(すでに遥か昔となった感もあるが…)のパソコンのクロックアップには、クロックオシレータ(モジュール)が必須でした。また、最近の機種でもPLLと切り離してCPUクロックを注入するためにオシレータを使うことがあります。 しかし、CPUクロックの高速化に伴い、クロックオシレータに高価なものを使わざるをえなかったり、また妥当な周波数のものが無く、あきらめる場合なども出てきました。私も数年前に改造をやっていたときには秋葉原をかけずり回って中途半端な周波数のモジュールを買い集めたものでした(^^;)。 それでも希望のものがない!特注するという手もあるけど、面倒なのと1個単位で受注してくれるところが少なくしかも高価ということで、それなら自分で作ってしまえ!と自作に走ったのでした。 わずかばかりの高周波分野の知識で実験を始め、3代目でほぼ満足のいくものができあがりました。このあたりは、この後を読んでもらえればわかるかと思います。とにかく安く!!(500円ぐらい?)ということを目指したので、だんだん部品点数が削減されています。そのかわり、規格品よりもちょっと大きいですが。 なお、この自作モジュールに関する事項は、PCVANのSIG HLABOに発表したものと同一です。 1 概要 基本波の水晶発振子をオーバートーン発振させることによって、高い周波数の方形波を作りだします。しかも、汎用部品を組み合わせるので、きわめて安価にできます。市販品よりサイズは大きくなりますが、C-MOSレベル出力ですので、ほとんどの機種で安定して使えます。 2 仕様 ・3rd〜7thのオーバートーン発振を利用した方形波発振回路3 第1世代の回路 第1世代は、アナログ高周波回路をもとに設計してみました。ブロック図は下記のとおりです。 ![]() 続いて、高速動作するトランジスタに信号をいれ、スイッチングさせます。ここで正弦波を方形波に変更します。最後に74HC04で波形の整形を行い、C-MOSレベルの方形波を出力します。実際の回路図は次のとおりです。 |
この回路の「ミソ」は、トランジスタでスイッチングを行うことです。周波数逓倍回路からヒントを得ました。ついでに、2段目の2SK241を使えば逓倍回路が組めると思いますので、基本発振の10倍高調波程度までなら出力できそうな気がします。
4 第2世代の回路 第1世代の回路での実験に成功して発表した後、すぐに思いついたのが第2世代の回路です。(下記がブロック図) ![]() 部品数の削減を図るため、スイッチングを74HC04自身にやらせてみようと考えました。最初はヒステリシス特性のある74HC14で試してみたところうまくいったのですが、しきい値がヒステリシスでなくてもいい(不定値のところは切り捨て)のではないかと考え、差し替えてみたところ同じように動作しました。要するに、HレベルとLレベルの値が交互にあらわれることを考えれば、その間だけ値を特定できればいいということです(波形の乱れを考えるとヒステリシス特性があった方がいいとは思いますが)。 |
回路図を見てもらってわかるとおり、本当にTrが無くなっただけです。それでも、実装面積が減ることと高速スイッチングTrがいらなくなるためかなり有効です。 5 第3世代の回路 続いて、最終モデルの第3世代回路です。(下記が回路図) |
このモデルでは根本的に発想を変え、初段から方形波発振させることにしました。これは、たまたま読んでいた高周波回路の本に、オーバートーン発振回路(もちろん正弦波)の説明が載っていたのを見て、自分なりに回路の動作を考察した結果、水晶発振子と並列に接続するコイルと負荷容量の関係は方形波発振回路にも適用できるのではないかと思いついたからです。 これが見事にあたって、定数の調整によってオーバートーン発振をさせることができました。ただし、同調回路がない分選択性が悪いので、うまく部品定数を調整して基本波を弱めないと不安定になります。L1は ほぼ計算で求められる値を使用できますが、C1・C2はごく少容量のセラミックコンデンサやトリマコンデンサを使って追い込まないとなりません。 多少サイズが大きくなっても良いのなら、FCZコイルなどのコア入りボビンに巻いたLを使うことによって、安定した発振が可能になります。やはりLもうまく調整してあげることが、安定した発振へのポイントです。 主な参考資料 (1)CQ ham radio 1992年10月号 P.372-376 「50MHzDSBトランシーバーの製作 1」 (2)「改訂 高周波回路設計ノウハウ」 吉田 武 著 CQ出版社 |